事業承継は待ったなし 大切な事業を次世代に引き継ぐために

国民の4人にひとりが65歳以上の高齢者となり、少子高齢化の勢いはこれからさらに増していくと言われています。少子高齢化、人口減少というどうすることもできない変化が、音もなく着実に進んでいる今、世代交代を余儀なくされる中小企業の数も同じように増加して行くと見られます。

高齢化による経営トップの世代交代、会社の跡継ぎをどうするかという問題は、中小企業に限ったことではありません。しかし、経営規模の小さい中小企業のほうが会社の存続に与えるインパクトが大きいことは明らかです。

中小企業は日本の会社の99%以上を占めており、労働者全体の7割の雇用を支えるなど日本経済にとって重要な役割を果たしています。人手不足が叫ばれるなか、中小企業のほうが高齢化の度合いも深刻です。

事業承継問題に直面した中小企業が世代交代を上手く乗り切ることができずに、会社を傾けたり廃業を選ばざるを得なくなることは、日本社会全体にとって大きな損失と言えるのではないでしょうか。

そもそも「事業承継」とは

会社を次の世代に引き継いでいくことに対して「事業承継」という言葉が使われます。
人によっては事業承継と聞いて相続税の問題と捉える向きもあることから、知らない人にとってはあいまいな感じのする言葉です。

また、一口に事業継承と言っても、企業規模や業種、経営環境などにより、事業の引き継ぎを行う道筋や最終目的地点はそれぞれに異なっています。場合によっては、関係者全員にとって最もハッピーである選択肢が廃業であることもあります。

これらを踏まえ、事業承継の全体像についてこれから数回にわたって詳しく見ていきます。

最初にマクロな視点から経営者の高齢化、後継者不足の実体や事業承継の現状についてのデータを見ることで、事業承継が中小企業経営者にとって差し迫った課題であることを認識して頂ければと思います。

中小企業経営者の高齢化は着実に進行している


帝国データバンク「全国社長年齢分析」(2018)p1より引用


中小企業庁「事業承継マニュアル」p4より引用

図①は帝国データバンクの企業データベース全体から社長の平均年齢を集計したもので、国内企業全体の経営者の年齢が高齢化していることを示しています。

図②は中小企業の経営者の年齢と引退した時点の年齢について見たものです。
図②左を見ると経営者の年齢のピークが年を経るに従い右に移動(高齢化)しており、1995年と2015年を比べると20年間で19歳高齢化しています。

時間の経過とともに経営者も年をとるのは当然の結果と思われるかもしれませんが、経営者の世代交代が健全に進んでいるのであれば、その平均年齢や年齢のボリュームゾーンに大きな変化はないはずです。

時間の経過とほぼ同じだけ経営者が高齢化しているということは、経営者の世代交代が進んでいないことを示しています。

図②右は中小企業※を小規模事業者※と中規模事業者※に分けて、その引退年齢の平均を見たものですが、数年前に引退した時点の経営者の年齢はそれぞれ、70.5歳、67.7歳と小さい会社の経営者のほうが高齢になるまで社長をしていたということになります。

※中小企業、小規模事業者、中規模事業者の定義について
これまで引用したデータのなかの中小企業は以下のような分類に基づいて定義されています。

◆中小企業

業種分類 中小企業基本法の定義
製造業その他 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
卸売業 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
小売業 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
サービス業 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

◆小規模企業者

業種分類 中小企業基本法の定義
製造業その他 従業員20人以下
商業・サービス業 従業員 5人以下

中小企業のうち小規模企業に含まれない会社を中規模事業者としています。
中小企業庁HPより引用

事業承継を行うタイミングはどんな時か


組織形態別に見た、事業を引き継いだきっかけ

中小企業白書(2017年)p281より引用

では、中小企業の事業承継はどんなタイミングで行われているのでしょうか。
中小企業のうち、会社の規模が大きいほど社長を引退するか、会長や相談役として会社に残るケースが多く、小さい会社や個人事業者ほど社長が亡くなったり、体調を崩すなどしてから事業承継を行っているということになります。

すなわち、小さい規模の会社ほど、経営者が続けられなくなった時点で事業の引き継ぎを行っているということで、前もって事業承継に取り組む余裕がないことを示しています。

後継者を決めているかどうか、廃業を考える場合の理由は


中小企業庁「事業承継マニュアル」p5より引用

図④左は全国4000の60歳以上の中小企業経営者に行ったアンケート調査で、半数が廃業を予定していると回答しています。すでに後継者が決まっていると答えたのは1割強にすぎません。
そして、半数の廃業を考える会社の理由として、約2/3が斜陽産業や業態など続けることが難しいケースであることが想定されますが、3割弱の会社で後継者不在をあげています。


今後10年間の事業の将来性
中小企業庁「事業承継ガイドライン」(2016年)p10より引用

図⑤のグラフは図④と同じ調査に基づいて作成されたもので、図④左の選択肢ごとに事業の将来性をどう見ているかを聞いたものです。

黄色の囲み部分に着目して頂きたいのですが、廃業を予定しながらも自社について現状維持、または成長できると考える中小企業経営者が4割存在しています。

図④、⑤の結果から、会社を残したいと考えながら後継者の確保が難しいことが理由で、廃業という選択肢を選ばざるを得ない状況にある中小企業が多く存在している実態が見えてきます。

価値ある事業を次世代に引き継いでいくために

社長が年をとって引退を考えても後継者がいなければ会社を続けることはできません。また、親族で経営している個人事業主や中小企業でも規模の小さい会社ほど経営者の高齢化と後継者難の問題は深刻です。

加えて、小規模な会社ほど社長個人の手腕によるところが大きく、その事業を後継者に引き継ぐというのは簡単なことではないのも事実です。

しかし、地域住民に親しまれ、まだまだ続いて欲しい会社やお店が惜しまれつつ廃業している実態があることは残念ですし、地域の経済や社会全体の活力が低下していくことにつながっていきます。

存続すべき会社を次世代に引き継いで行くために、中小企業経営者のみなさまに事業承継について知って頂き、将来に備えて取り組むきっかけになればと思います。

次回は事業承継の事例を見ながら、具体例をあげることで事業承継を身近に感じて頂ける内容をご紹介いたします。

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